Kawasaki Ninja e-1 / Z e-1 の航続距離表示の謎
Ninja e-1 / Z e-1 のスペックにおける航続距離の値(の小ささ)は、本当に謎です。
以前の記事でも取り上げ、その時には「誤字じゃね?」と書いたのですが。
でも、どうも誤字ではないようですね。
WMTCと定地走行値
まず、カワサキUKの Z e-1 のページにおける航続距離("Range")を見てみましょう。
72 km (WMTC)
カワサキモータースの Z e-1 のページの「一充電走行距離」を見てみると。
53km (ROADモード、60km/h定地走行値、1名乗車時)
違っている。
理由は明確で、前者は「WMTC」値、後者は「60km/h定地走行値」だから。
でも何で?
だって「WMTC」で表記したら、ぱっと見、20km近く「盛った」値になるんよ。
それなのに何でわざわざ小さい方の値(定地走行値)を書く?
書いてある理由と書かれていない理由
…と思ったら、法令?で決まってるからなんですね。
二輪車の場合は30 km/h(原付自転車)および60 km/h(自動二輪車)での定地走行燃費を示すことが義務付けられている。
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%87%83%E8%B2%BB
とはいえ、WMTCの計測値を「併記」することは構わないはず。
二輪車メーカーによる自主的な取り組みとして2013年7月より「WMTCモード」による表示の併記も順次行われている。
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%87%83%E8%B2%BB
日本自動車工業会の「二輪車の燃費『WMTCモード値』」PDFの「はじめに」には、以下のようにあります。
二輪車の走行実態に近い新排出ガス試験法として、2005年に国際的な統一基準:GTRが制定されました。この試験法を「WMTCモード試験法」と呼びます。
https://www.jama.or.jp/operation/motorcycle/WMTC/WMTC.pdf
この試験法では排出ガス試験で得られた結果から排出ガスだけではなく燃費を計算する方法も規定されています。
WMTCモード試験法は2012年10月から日本に導入されましたので、これ以降の新型車の燃費表記では「WMTCモード値」をカタログに記載することが可能になりました。
そして同じPDFの5ページ目には、このようにあります。
Q3:何故WMCTモード燃費が表記されないモデルがあるのですか?
https://www.jama.or.jp/operation/motorcycle/WMTC/WMTC.pdf
A:WMTCモード燃費の表記対象車は、WMTCモード測定法で排出ガス認証取得を行ったモデルのみになります。
Ninja e-1 / Z e-1 は電動車なので、どう足掻いても「WMTCモード測定法で排出ガス認証取得を行ったモデル」になれない(排出ガスないからね)。
なるほど、これが Ninja e-1 / Z e-1 の一充電走行距離がWMTC値で書かれていない理由か…。
すべて想像の域を出ないのですが
厳密に言えば、上記で引用した資料(wikiとかPDFとか)は、エンジン車の燃費測定について言及しているものであり、これが丸々電動バイクに当てはまるかどうかはわからない。
だから、「一充電走行距離がWMTC値で書かれていない理由」も、いおぶろぐの想像の域を出ない😅
とはいえ、四輪の自動車のカタログ燃費表示がWLTC(WMTCの四輪版)モード値表示になっているのに、二輪の燃費のWMTCモード値表記が未だ「国内二輪車メーカーの自主的な取り組み」でしかない(法令で決まっていない)ことが、電動二輪車の一充電走行距離を定地走行値でしか表示できない理由の一つなんじゃないですかねえ…。
WMTCモードでの電費が、必ずしも実際の電費と合致するわけではないでしょうが、より「消費者の利になるように」燃費の測定・試験方法が進化してきたんですから、電動二輪車だって、四輪車と同じく、グローバルな測定方法(=WMTC)での一充電走行距離表示に、早くなって欲しいものですね。
70km走ってくれるかなあ、Ninja e-1…。
動画作りました!
というわけで、この内容を動画にしてみました。
ぜひご覧ください。
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