EVバイクの定格出力・最大出力について ~Kawasaki Z EV(Ninja EV)の出力についての考察~

Kawasaki Z EV の出力について、1kw=原付二種登録だから残念、という記事を上げました。

EVの定格出力と最大出力

ん?
そもそも、EVの出力って何だ?
そして「定格出力」とか「最大出力」とかも聞くけど、それって何なん?

…といういおぶろぐの疑問をすべて解決してくれる記事がありました。
ありがとうございます。

曰く、

この定格出力。電動バイクにおいては「それ以下の力しかない粗悪なモーターではありませんよ」という法的な意味を持つものだそうです。つまり、最低でもこのくらい力があります、というお墨付きなんですね。逆に言うと、もっと力があるモーターならメーカーが低く申告しても、法的にはなんら問題がないのです。背伸びがだめなだけで。

https://ameblo.jp/strawberrin/entry-11960204227.html

え?出力を低く申告する分には問題ないの?😳

そして、モーターは一時的ならもっと大きな力を出すことできます。この最高値が「最大出力」と言われるもの。600wの定格出力のバイクで最大出力1500wある、というのは、一時的に1500wのパワーを引き出せるけれども、あくまで加速時だけとか一時的な出力としてであって、常時1500wを連続的に出力することはできない。600Wなら最低保証しますという意味です。

https://ameblo.jp/strawberrin/entry-11960204227.html

まとめると、定格出力はある意味でメーカーの言い値です。1500wを連続的に出力することができても、「いや安全性が保証できるのは600wだ」と言ってしまえば「定格出力は600w」として登録されます。ガソリン車で言うなら、1000ccのエンジンを積んでいるのに、「50ccのパワーなら保証します」と言えば「原付一種」と区分されることが可能というわけです。

https://ameblo.jp/strawberrin/entry-11960204227.html

極端な話、ZERO SR/F のようなモンスター大型電動二輪であっても、メーカーが

定格出力1kWっス🙄

と言えば、原付二種ってことなのか…。

法律や行政的には、安全な方向に振りたい。出力が1kWを超えていて軽二輪として高速道路も他の交通と同程度の速度が出せる性能があることを確認したい。ので、知りたいのは「定格」の値なんでしょうね。

でもユーザー的には、どちらかというと知りたいのは「最大」の方じゃない…?

性能を一覧にして比較してみる

Z EV/Ninja EV の出力等性能を想像するにあたり、すでに販売されている、似た性能の車両と比べてみようと思いました。
以下の2車種です。

TROMOX UKKO S

ホイールサイズが13インチで車体もコンパクトではあるものの、Z EV と同じく定格1kW、バッテリー容量においては3960Whと、Z EV を凌ぐ。
最大出力は、日本代理店のHPに記載はないが、本家HPによると8kWとなっている。

SUPER SOCO TC MAX

当ブログでもたびたび言及している車両。
日本代理店のHPでは最大出力は書いていないものの、SUPER SOCO英法人?のHPによると、最大出力は5kWとなっている。
最大出力は UKKO S よりも低いのに、定格が3.9kWであるため、日本では軽二輪登録となっている。
(日本代理店としては逆に原付二種で売りたかったのかもしれないが…)

比較一覧表

バッテリー容量定格出力最大出力最高速度航続距離
TROMOX
UKKO S
3.960kWh1kW8kW?90km/h90km
SUPER SOCO
TC MAX
3.240kWh3.9kW5kW?95km/h110km
Kawasaki
Z EV/Ninja EV
3.0kWh1kW11kW?

これはガソリンバイクでも同様かと思いますが、エンジン/モーターの出力に正比例して最高速度も上がるわけではありません。
そして航続距離は、現時点では全世界統一の基準(体重何kgの人が時速何キロで走った時、などの条件)がないため、各メーカーの言い値になっている部分も大きいです(目安にはなるでしょうが…)。

でも、バッテリー容量も大きく最大出力も勝っているUKKO Sが、最高時速、航続距離ともにTC MAXに及ばない、というのは、

メーカーの「味付け」が重要

ってことの表われなんじゃないかなと思います。

上記の表から言えるのは、
UKKO S:力強さを重視。最高速はそこそこながらも最大8kW出力モーターのフィールを楽しめる(多分)
TC MAX:使いやすさを重視。最大出力の小さいモーターながらも最高速と航続距離を両立

…という「味付け」を両メーカーがやった、ってことだと思います。

ではカワサキは?

じゃあカワサキはどう「味付け」するのか、ですが…。

公式からして「近距離コミューター」と謳っているわけですから、TC MAX的な味付けでしょう。
常用域での出力は5、6kWあたりに抑えられるのではないでしょうか。
ただ「e-boost」ボタンが備わっており、そのブースト…出力が大きくなる…時間に制限がない(押し続けている間はずっとブースト)仕様、かつブースト時の最大出力が11kWだった場合、最高時速は100km/hくらいになるのではないでしょうか。

Z EV:気軽に乗れるがいざというときには強い
(「山椒は小粒でピリリと辛い」と書こうとしたが、さすがに昭和すぎる言い回しですね…)

という味付けになるのではないでしょうか。
大手モーターサイクルメーカーとして、ユーザーが喜ぶ勘所を知っている、というのを見せつけて欲しいですね。